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ただし・・・ |
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仕事が終わったらなるべく寄り道せずに、まっすぐ家に帰りましょう! でないと・・・ | |
労働者災害補償保険法(以下、労災保険法)上の通勤災害 昭和22年の労災保険法制定時には、通勤途上における災害は業務外とされ、労災保険の対象となっていませんでした。 しかし、昭和48年に「労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」については、通勤災害として別の認定基準を設け 労災保険を適用することとなりました。 ところで、”通勤による”とは言っても、通勤中の事故なら何でも労災が認められるわけではないので、厄介なのです。 通勤による とは 法は、通勤と災害との間に相当因果関係が認められることが要件だと言っています。 相当因果関係?つまり、通勤途中で通常考えられる危険が具体化したものでなければならない、ということです。 ”通勤による”例) ○ 駅の階段でつまずいて転倒し、負傷した。 マイカー運転による自動車通勤中に、センターラインをはみ出した対向車と正面衝突し、負傷した。 × 通勤途上で、わざとケガをした場合や自殺をしようとしたがケガで済んだ場合、ケンカなどは、 ”通勤による”災害とは認められません。 通勤 とは では、労災保険法上の「通勤」とはどのような場合を言うのでしょうか。 労災保険法第7条2項をみてみますと、 「通勤とは、労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により 往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。」 と、規定されています。 なんだか抽象的で条文を読んでもよく判りませんね。少しずつ区切って解説しましょう。 就業に関し とは その通勤する行為が仕事をするため、又は仕事を終了したことにより行われるものであることが要件となります。 つまり、労災保険法上の通勤と認められるには、労働者が、災害当日に仕事をすることになっていたか、又は現実に 仕事をしたかどうかが問題となります。 ”就業に関し”例) ○ 全社員参加が義務付けられ、出勤扱いとなる行事に参加する場合 会社の命令で、得意先を接待する場合 労働組合専従役職員が労働組合大会へ出席する場合 × 休日に会社の運動施設を利用しに行く場合、任意参加の会社行事に参加する場合は、 仕事とみなされないようです。 出勤日に業務開始時刻をメドに住居を出て会社へ向かう場合は、寝すごしのため遅刻したり、朝の通勤ラッシュを 避けるために通常よりも早出したり、出勤途中で自宅に忘れてきた会社の書類を取りに戻り再出勤する場合のように、 時間的に多少のズレがあっても就業との関連性が認められます。 (※ 多少というところがミソです!) 住居 とは 労働者が居住して日常生活をしている場所で、労働者本人の仕事をするための拠点となるところを意味します。 ですから、労働者が家族の住む自宅とは別に会社の近くに単身でアパートを借りて、そこから通勤しているのが常となって いる場合には、そのアパートが「住居」とみなされます。 ”住居”の例) ○ 早出出勤のために、通常の家族の居る家とは別に、会社の近くに借りたアパート 単身赴任者が週末に会社から直接帰り、、週明けには直接会社に出勤する家族の居る自宅 × 会社の同僚宅で帰りにマージャンをやり、そのまま同僚宅に宿泊し、翌朝直接会社に出勤する 場合の同僚宅 ところで、通勤の始まりはどこからなのか、ご存知ですか? 実は住居の形態によって、認定基準が下記のとおり違っています。 住居の境界について (どこから先が通勤となるのか) マンションや公団については、各世帯の「ドア」 戸建住宅等については、その住宅の「門戸」 つまり、マンションの玄関ドア前の共有廊下での災害は通勤災害となりますが、戸建住宅の玄関ドアを出てからの事故でも そこが、門戸より中である場合(庭など)は、自宅敷地内の事故ということで、労災保険法上の通勤災害とは認められない ことになってしまうのです。 就業の場所 とは 労働者が仕事を開始し、又は終了する場所を意味します。 通常は、会社、工場、事務所等になるのですが、営業等で商品を得意先に届けてそこから直接帰宅する場合の最後の届け先 や、全員参加が義務になっている会社主催行事の会場等も「就業の場所」に該当します。 直行直帰の営業マンの場合は、自宅を出てから最初の得意先が、業務開始の就業の場所であり、そこまでが「通勤」と なります。 よって、次の得意先への移動は通勤ではなく、就業の場所間の移動とみなされ、「業務行為」となります。 合理的な経路及び方法 とは 住居と仕事場との間を往復する場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び手段等を意味します。 経路と方法に分けて、もう少し詳しく解説しますと、 合理的な経路 とは 労働者が通勤のために通常利用することが出来る経路であれば、そのような経路がたとえ複数あったとしても、 それらの経路はいずれも合理的な経路となります。 ですから、会社へ通勤経路として届け出ている鉄道、バス等の通常利用する経路はもちろんのこと、他にも特段に 遠回りにならない代わりになる経路があれば、それも合理的な経路として認められます。 合理的な方法 とは 鉄道、バス等の公共機関、及び自動車、バイク、自転車、徒歩等、通常考えられる通勤手段は、労働者が常日頃、 用いているか否かにかかわらず一般的に合理的な方法と認められます。 したがって、自動車通勤を会社から禁止されている労働者が、たまたま自動車で通勤したとしても、そのことだけをもって、 合理的な方法でないとはみなされません。 例) × 無免許または、泥酔状態で自動車等を運転していた通勤途上での災害 業務の性質を有するもの とは 上記の各要件を満たした通勤行為であっても、その行為中に被った災害が業務災害と認められるもの を意味します。 例) ○ 会社の専用バス等を利用する通勤 突発的緊急用務のために休日や休暇中に呼び出しを受け予定外に緊急出勤 ※ このような場合は、通勤災害ではなく、業務上災害として労災保険が使えます。 次に、労災保険法第7条3項をみてみましょう。 「労働者が、前項の往復の経路を逸脱し、又は同項の往復を中断した場合においては、 当該逸脱又は中断の間及びその後の同項の往復は、第1項第2号の通勤としない。 ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものを やむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き この限りでない。」 と、規定されています。 つまり、原則として、寄り道をした間、及びその後の帰宅行為は労災保険法上の通勤とは認められないが、 例外として、厚生労働省の定める基準内において、ある程度の寄り道をしても、寄り道の間を除き、その後再び合理的 な経路に戻った場合は、労災保険法上の通勤と認められる ということになります。 その基準が、「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるもの」 を 「やむを得ない事由により行うための最小限度のもの」 ということになります。 日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるもの とは 1.日用品の購入その他これに準ずる行為 例) ○ 帰宅途中で惣菜等を購入する場合 独身労働者が食事のため食堂に立ち寄る場合 クリーニング店に立ち寄る場合 2.職業能力開発促進法第15条の6第3項に規定する公共職業能力開発施設における職業訓練、 学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練 であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為 例) ○ 夜間の大学、専門学校、専修学校 職業能力開発総合大学校 栄養士、調理師、理容師、美容師、保育士、商業経理、和洋裁 (いずれも修行期間1年以上のもの) × 茶道、華道、自動車教習所、資格予備校 3.選挙権の行使その他これに準ずる行為 4.病院又は診療所において診察を受けることその他これに準ずる行為 準ずる行為の例) ○ 柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等の施術 やむを得ない事由により行うため とは 日常生活を維持していくための必要から通勤の途中で行う必要のあることをいいます。 最小限度のもの とは 逸脱又は中断の原因となった行為の目的を達成するために必要とする最小限度の時間、距離等をいいます。 参考文献: 労災認定早わかり(三信図書) 通勤災害認定の実務(労務行政研究所) 通勤災害に関するよくある間違った認識例 1.通勤中のケガで労災を使うと、会社の労災保険料が上がって会社に迷惑をかけてしまう!? 大丈夫 ⇒ 通勤災害で労災保険を使っても、労災保険料は上がりません。 遠慮なく、労災申請してください。 2.通勤中、車同士の事故でケガをした場合、相手の保険会社から治療費と休業損害を貰えるから労災は使えない!? 大丈夫 ⇒ 労災保険が使える場合があります。 例えば、相手が任意保険に加入していなかった場合、自賠責保険の治療費限度額120万円を超えた場合は 労災保険から治療費を出してもらえます。 また、自賠責より前に労災保険から治療費を出してもらい、後から自賠責に労災保険から被害者に代わって 請求をしてもらうこともできます。(求償といいます) この場合、労働基準監督署の担当によっては手続きが煩雑になることから(?)好意的に手続きしていただけ ないこともあるようですが法律上は全く問題ありません。 通勤中のケガが原因で会社を休まなければならなかった場合、相手の自賠責保険、任意保険から休業損害金 が貰える場合でも、労災保険制度の労働福祉事業から休業特別支給金(給料の約2割分)がもらえます。 3.会社に届け出た経路、方法で通勤していなかったので、労災は使えない!? 大丈夫 ⇒ 本来、電車通勤等で会社に通勤方法を届け出ていても、通常、会社の経路として遠回りや寄り道等を していなければ、合理的な経路及び方法として認められ、労災給付が受けられる可能性が大きい です。 ※ 合理的な方法にご注意ください。 健康上のため、1時間以上もランニングして通勤する等著しく 社会通念上の通勤方法を逸脱した方法ですと、もはや通勤が目的ではなく、その方法が目的と みなされてしまうこともあるようです。 4.帰宅途中で寄り道をした後に、災害に逢うと通災が認められない!? 大丈夫 ⇒ 日用品を買う場合や、病院に寄って治療を受ける場合、床屋に寄る場合、晩御飯のおかずを買う場合等、 短時間で事が足りる場合は、立ち寄り後、元の通勤経路に戻った後にケガを負った場合は通災事故と 認められる可能性があります。 以上から、不幸にも通勤途中に災害に逢い、病気やケガを負った場合でも基本的には通勤災害として認められるのが、原則です。 しかし、残念ながら、認められなかった事例もあります。 × 1.日用品等を買うために立ち寄っていたスーパーやコンビニ、病院の窓口などで被災した場合。 日用品等を買っている間は、通勤ではなく、買い物の途中とみなされ、 病院に居る間は、診察を受ける為であって、通勤中とはいえない、ということでしょう。 立ち寄り中の事故は、通勤災害とはならない! 、 × 2.パチンコ店、マージャン店に立ち寄ったり、飲み屋で長時間飲食した後の帰宅途中に被災した場合。 長時間、私的な用事を済ませた後の帰宅は、通勤ではなく、私的行為のための帰宅とみなされてしまいます。 あまりにも長い私的な用事を帰宅途中にする場合は、その後は通勤と認められないことが多いので、注意が必要です。 長時間とみなされる時間の目安ですが、100分以上の私的行為で認められなかった例があります。 立ち寄り時間はなるべく短く! × 3.奥さんが自宅に居るのに、帰宅途中で食事をした後、通勤経路で被災した場合。 過去の事例から、妻帯者の場合、帰宅途中で食事を摂った場合、20分という短時間でも認められなかった例があります。 逆に独身者の場合、1時間程、帰宅途中で食事を摂っても、その後の通勤経路での被災において、通勤災害が認められた 例があります。 妻帯者は、家で夕食を摂るべし! 通勤災害の認定相談はこちらまで ↓ |
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通 勤 災 害 事 例 集 |
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認められた事例 業務終了後、事業場施設内で労働組合の用務を長時間(2時間5分)行った後に帰宅する途中の災害 出勤した後、自動車のライト消し忘れに気づき、会社の駐車場へ引き返す途中の災害 帰宅途中に忘れ物に気づき、職場に戻る途中の災害 夫の看護のため、母親と交替で一日おきに寝泊りしている病院から出勤する途中の災害 通常は下宿先から通勤していた労働者が、平日母の急病のため実家に帰り、翌朝、出勤途上において被った災害 、 週末に自宅へ帰宅していた単身赴任者が、週明けに自宅から会社へ直接出勤する途上での災害 新聞配達員が、最終の配達場所から帰宅する途中の災害 自動車通勤者が、同一方向にある妻の勤務先を経由する経路上における災害 自転車に二人乗りして帰宅する途中の災害 バス通勤者が帰宅する途中、日用品の購入のため途中下車し再びバスに乗車する際の災害 帰宅途中、自宅とは反対方向にある義姉宅に惣菜をもらいに行き、再び通勤経路に復した後の災害 帰宅途中、理髪店に立ち寄った後の災害 帰宅途中、二度の食事を摂り、再び通常の経路に復した後の災害 帰宅途中、経路上の給油所が閉店していたため自宅の先にある給油所において給油後の災害 帰宅途中、暴漢に襲われた災害 自動車通勤中、前の自動車の発進を促すためクラクションを鳴らしたことにより発生した災害 自動車通勤者が帰宅途中、同僚を乗せようとした際、強風のため右手をドアに挟まれた災害 砂利道における自転車通勤者のめまいによる災害 通行の妨げになる障害物を移動中の災害 出勤途中、野犬にかまれた災害 帰宅途中、ビルの屋上から落下してきた人の巻き添えによる災害 認められなかった事例 路面凍結を予想して、通常の出勤時刻とかけ離れた時刻に出勤する途中の災害 業務終了後、事業場施設内でサークル活動を行った後に帰宅する途中の災害 出勤途中、交通事情で遅刻しそうになったため、会社の許可を得て休暇を取り、帰宅する途中の災害 休暇中に会社へ給料を受領に行き、その帰宅途中における災害 昼休みに帰宅する途中の災害 就業の途中で子供を歯科医院に送り届けた後に、再び会社に向かう途中の災害 一戸建ての屋敷構えの住居の玄関先における転倒災害 自宅敷地内にある車庫での転倒 自動車通勤者が、前日泊った婚約者宅から出勤する途中の災害 事業場施設内の階段における転倒災害 共用ビル(貸ビル)の玄関ドアに衝突し負傷した災害 会社主催の新入社員歓迎会への出席後、泥酔のため帰宅途中で被った災害 通常の通勤経路によらず同僚の自家用車を借用し、同僚を送った後の帰宅途中の災害 退勤中、長時間にわたり日用品の購入等をした後、通勤経路に復した後の災害 帰宅途中食事を摂り、再び通常の通勤経路に復した後の災害 帰宅途中、経路上の喫茶店でコーヒーを飲んだ後の災害 新入社員歓迎親睦会に出席した後、駅のプラットホームから誤って落ち電車にはねられた災害 帰宅途中病院に立ち寄るため途中のバス停で下車し、道路を横断中の災害 帰宅途中、会社のマイクロバスを降りた直後、そのバスにひかれた災害 ⇒ 業務災害として認定 早朝出勤命令を受け、通常と異なる交通機関・経路で出勤する途中の災害 ⇒ 業務災害として認定 出勤途上における急性心不全による死亡事故 自動車通勤者が同僚の自動車をけん引中の災害 参考文献: 通勤災害認定の実務(労務行政研究所) |
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